入通院慰謝料の自賠責基準と弁護士基準
自賠責は交通事故の最低限の保障
交通事故について自賠責保険は、自動車やバイクによる人身事故の被害者に最低限の損害賠償を保障する制度です。
最低限の保障ですから、交通事故で怪我をした場合の損害賠償額は、多くの場合、自賠責基準では弁護士基準より低額になります。
(なお、これとは形式的な計算上で異なる場合について過失割合のページの下段「自賠責の重過失減額」に記載しています)
そして、交通事故における入通院慰謝料(傷害慰謝料)についても、自賠責基準は弁護士基準より低額になっています。
自賠責基準による入通院慰謝料
交通事故の人身被害について、自賠責基準の入通院慰謝料(傷害慰謝料)は1日当たり4,300円とされています。
この4,300円に、「実通院日数×2」と「治療期間」で少ない方をかけて慰謝料を算出します。
たとえば、以下の通りです。
実通院日数46日(×2=92日)、治療期間90日の場合、4,300円×90=38万7,000円。
実通院日数44日(×2=88日)、治療期間90日の場合、4,300円×88=37万8,400円。
ただし、自賠責保険の傷害に対する賠償額は120万円が限度と定められており、この120万円は、治療関係費用(診療費、通院費など)、休業損害、入通院慰謝料(傷害慰謝料)など傷害による損害の合計の限度額です。
このため、これら合計額が120万円を超えると、上記の計算方法による慰謝料の全額は支払われないことになります。
なお、上記のうち「4,300円」は令和2年(2020年)4月1日以降に発生した事故に適用され、同年3月31日までに発生した事故については「4,200円」になります。
弁護士基準による入通院慰謝料
交通事故の弁護士基準による入通院慰謝料(傷害慰謝料)については、日弁連交通事故相談センター東京支部(赤い本)は、原則的な算出方法として別表Ⅰを使用し、むち打ち症で他覚所見がない場合等は別表Ⅱを使用するという基準を設定しています。
いずれも、入通院期間からの算出が原則です。
ただし、別表Ⅰより別表Ⅱのほうが低額になっていて、怪我について他覚所見があれば別表Ⅰ、むち打ち症以外でも他覚所見がなければ別表Ⅱを使用することが実務で定着しています。
このため、弁護士基準による慰謝料の算出において、他覚所見の有無の違いが重要になってきます。
それぞれの適用は以下のとおりとされ、たとえば通院3か月(入院なし)の場合、別表Ⅰで73万円、別表Ⅱで53万円です。
原則
- 入通院慰謝料(傷害慰謝料)については、原則として入通院期間を基礎として別表Ⅰを使用する。
- 通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。
- 被害者が幼児を持つ母親であったり、仕事等の都合など被害者側の事情により特に入院期間を短縮したと認められる場合には、増額することがある。なお、入院待機中の期間及びギプス固定中等安静を要する自宅療養期間は、入院期間とみることがある。
- 傷害の部位、程度によっては、別表Ⅰの金額を20%~30%程度増額する。
- 生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰返したときなどは、入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮する。
別表Ⅰ
(入院・通院=月数、金額=万円)
入院 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
通院 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | |
1 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 |
2 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 |
3 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 |
4 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 |
5 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 |
6 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 |
7 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 |
8 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 |
9 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 |
10 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 |
11 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 | 312 |
12 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 | 314 |
13 | 158 | 187 | 213 | 238 | 262 | 282 | 300 | 316 |
14 | 162 | 189 | 215 | 240 | 264 | 284 | 302 | |
15 | 164 | 191 | 217 | 242 | 266 | 286 |
〔表の見方〕
- 入院のみの場合は入院期間に該当する額。
- 通院のみの場合は通院期間に該当する額。
- 入院後に通院があった場合は、該当する月数が交差するところの額。
- たとえば別表Ⅰで入院3か月、通院3か月の場合は188万円。
上記の表を超える期間についても慰謝料額の設定はあります。その点についてはお問い合わせください。
むち打ち症で他覚所見がない場合等
(「等」は軽い打撲・軽い挫創(傷)の場合を意味する)
- 入通院期間を基礎として別表Ⅱを使用。
- 通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。
別表Ⅱ
(入院・通院=月数、金額=万円)
入院 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
通院 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | |
1 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 |
2 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 |
3 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 |
4 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 |
5 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 |
6 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 |
7 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 |
8 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 |
9 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 |
10 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 |
11 | 117 | 135 | 150 | 160 | 171 | 179 | 187 | 193 |
12 | 119 | 136 | 151 | 161 | 172 | 180 | 188 | 194 |
13 | 120 | 137 | 152 | 162 | 173 | 181 | 189 | 195 |
14 | 121 | 138 | 153 | 163 | 174 | 182 | 190 | |
15 | 122 | 139 | 154 | 164 | 175 | 183 |
上記の表を超える期間についても慰謝料額の設定はあります。その点についてはお問い合わせください。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)の冒頭ページへ、以下をクリックして移動できます。